「ありそうでなかったもの」:追いかけてはいけない3つの理由

商品

ビジネスの世界では「ありそうでなかったもの」を商品化して大ヒットさせることができたら、一種のサクセスストーリーとして語られますよね。メディアにも露出され企業評価にも良い影響が出る可能性もあります。

逆に、テレビなどで取り上げられる新商品は「ありそうでなかったもの」であることが多いもの。

なので、「ありそうでなかったもの」を世の中に出したい!という希望というか願望というかは、いつも・どの時代にもビジネスに世界にあるのです。

とりわけ、

  • 競合ひしめくレッドオーシャン
  • 衰退産業と言われている業界

でそれをやったら、企業や担当者はヒーロー扱いですからなおさらです。

なにしろ顧客自身も気づかなかった「隠れたニーズ」を掘り起こして、カタチにして、ヒットさせたわけですから、大したものです。なので、そんなこと出来たら・・・と考えるとワクワクしますよね。

例えば、こんなものが「ありそうでなかったもの」として挙げられます。

サントリー「翠ジンソーダ缶」

ジンの需要は昔から一定程度あったのですが、やはり「カクテルとしてバーで飲むお酒」というポジションでした。家庭で飲む際も、ボトルでジンを買って炭酸水で割って・・と手間がかかると言えばかかるものだったわけです。

そんな中、ハイボール、レモンサワーという「炭酸ブーム」の流れに乗せたのこの商品。一定程度のジンへのニーズを「缶で飲む」という「カタチの変更」という仕掛けで顕在化したのがサントリーの「翠ジンソーダ缶」。「ありそうでなかったもの」の一つとして言えると思います。

IKEA 足つきまな板「ストルトヘット」

まな板はどの家庭でも使っている日用品。でも狭いキッチンで食事の準備をする時に「邪魔になる瞬間」という課題もありました。邪魔になる瞬間とは切った食材とそれを入れておく保存容器がキッチンに同時に置いておくとスペースがなくなる問題。でも多くの人は「ま、しょうがないか」となんとかやりくりしてきた、言ってみれば「解決にコストをかけるほどでない課題」だったのです。

しかし、この課題を解決したと思っている人がいるのも事実。この、足つきまな板「ストルトヘット」はその人たちのへの課題解決です。切った食材を入れた保存容器をまな板の「下」に置いておけることでスペース問題を解決。しかも、切った食材を保存容器に移すのも段差があるので入れやすいという利点もあります。これも「ありそうでなかったもの」の一つ。

エースコック「天津麺」

商品名もまさに「ありそうでなかった天津麺」。醤油味と塩味が発売されています。そもそも天津麺とは、簡単に言うと「かに玉を乗せた醤油ラーメン」のこと。これだけカープ麺市場が大きくなり、さまざまな種類のカップ麺やブランドラーメン店のカップ麺が出ているにもかかわらず、飲食店の店舗では人気の「天津麺」がなかったのです。技術的に難しかったからなのかは不明ですが、いずれにしてもこれも「ありそうでなかったもの」。

「ありそうでなかったもの」:追いかけてはいけない3つの理由

「ありそうでなかったもの」の紹介が長くなったので、「ありそうでなかったもの」をオススメする記事かと思いきや、そうではありません。

いや、それどころか、あなたがスモールビジネス経営者なら「ありそうでなかったもの」を追いかけるのは絶対ダメ!と断言したいのです。

その理由は以下の通りです。

  • コストがかかるから
  • 「ないと困るもの」でないから
  • キャッシュフロー管理が難しいから

それでは一つずつ説明します。

コストがかかるから

「ありそうでなかったもの」を商品化するとは、潜在ニーズ(顧客自身も気づかなかったニーズ)を掘り起こし「こんなのあったら便利ですよね」と市場で提示すること。

顕在ニーズ(すでにニーズがあることがわかっているニーズ)を商品化するのも、あれこれ手間もあかるし大変なのに、潜在ニーズを掘り起こして商品化するには、膨大なコスト(手間・金額・時間)がかかります。

なので、経営資源(人・モノ・カネ・情報)がそもそも少ないスモールビジネスではこれをやるのは、相当な賭け。負けると大変なことになるので「ギャンブル」と言っていいかもしれません。なので、追いかけてはいけないのです。

「ないと困るもの」でないから

「ありそうでなかったもの」は、言い方を変えると「あったらいいよね」なもの。よくnice to haveなんて言いますが、それです。

一方「ないと困るもの」はmust have なんて言われます。

  • must haveはお金を払っても欲しいものですが
  • nice to haveはお金を払ってでも欲しいかどうかは不明

です。

仮にお金を払ってでも欲しいものであったとしても「継続して払うか」と問うと、さらに疑問。スモールビジネスは、お金を払ってでも欲しいもの、つまりmust haveの商品に特化すべきなのです。

キャッシュフロー管理が難しいから

仮に大ヒットになった場合どうかるか?注文が殺到しますよね。それはそれで嬉しいことなのですが、ちょっとイメージしてみてください。

注文が殺到すると、それに対応するため急ピッチで製造することになります。そうなると、製造コストがかかります。製造コストの回収は販売後にするわけですが、「支払いと回収」の間には時間的ギャップが生じるわけです。要はキャッシュフローですよね。キャッシュが先に出って行って、その後キャッシュが入ってくる。その間の時間的ギャップにスモールビジネスが耐えられるか問題が発生するのです。大企業ならなんなくできることもスモールビジネスでは「難しい」こともよくあること。

さらに言うと「製造したものの、そこまで売れなかった」問題も出てくる可能性があります。というか「ヒットしたから沢山作った」。でも「作った数が売り切れるほどヒットは続かなかった」となり「在庫の山を抱えた」という泣くに泣けない事例はいくらでもあります。スモールビジネスの場合、そこに張っていくのはいくらなんでも危険過ぎます。

まとめ

ということで「ありそうでなかったもの」を商品化してヒットさせるのは魅力的。経営者としては「いつかは実現したい」と思う気持ちはよくわかります。でも以下3つの理由でこれを「スモールビジネスの経営者は絶対に追っかけてはいけない!」ということをお伝えしました。

  • コストがかかるから
  • 「ないと困るもの」でないから
  • キャッシュフロー管理が難しいから

ではまた

(あ)

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