日本企業の海外展開を考える時、最もハードルの低いやり方の一つがクラウドファンディングです。事業の性格や商品にもよりますが、弊社がお手伝いしているのは主に米国のクラウドファンディングプラットフォームを使ったものです。
資金調達と受容性調査が兼ねられるプラットフォーム:クラウドファンディング
クラウドファンディングを海外進出の方法の一つとしておすすめしている理由は、工数もコストも比較的小さい規模で
- 資金調達ができるだけでなく
- 商品の受容性の調査もできる
という大きなメリットがあるからです。
さらに、資金調達に成功した先の事業展開を考えても大きなアドバンテージがあります。クラウドファンディングで資金集めに成功することは、一定数のファンがついたことを意味します。
スクラッチで始めるのと、ある程度のファンがいるところから始めるのを比べたら、その先の展開の成功確率が違うのは想像に難くないですよね。
だからと言って、クラウドファンディングのプラットフォームにページを開設して商品を載せれば資金が集まるかというと、こそまで簡単ではありません。
たとえ、KickstarterやIndiegogoといった世界中から注目されているプラットフォームでさえそうです。
ここでは、弊社がお手伝いしているクラウドファンディングのやり方やその後の継続したビジネスに以降するためにやるべきことについてご紹介します。
そもそもクラウドファンディングとは?
クラウドファンディングは、エンジェル投資家や銀行のような投資元から大きな金額を求める代わりに、プロジェクトの成功を望み、プロジェクトの成功によって何らかの見返りを望む多くの一般の人から少額の資金を調達するスキームです。
なぜアメリカのクラウドファンディングがいいのか?
日本にもクラウドファンディングのプラットフォームはいくつもあります。どれも素晴らしいものです。しかし、
- 利用者数だけ見ても日米のクラウドファンディング・プラットフォームには数十倍の違いがある
- 近い将来海外進出を考えているのであれば、現地の消費者の志向を把握しておいて方がいい
という理由でもアメリカのプラットフォームを使うことをおすすめします。
アメリカのクラウドファンディングのプラットフォームを使うべき理由をおさらいすると
- 利用者が桁違いに多く、資金調達の可能性が広がる
- 海外の消費者に対する商品の受容性の調査を兼ねられる
- 実施の事業展開につなげやすい
からです。
ビジネスにとって資金調達はスタート地点。そこからどう展開していくかが本番です。その際、市場調査や消費者動向、トレンドといった調査を金と時間をかけてするのがお普通のやり方。「マーケティングの初動」といったります。しかし、アメリカのクラウドファンディングのプラットフォームを使えば、資金調達と「マーケティングの初動」が同時にできるのです。
クラウドファンディングの種類
一般的には以下の3つに分けられます。:
- 投資型:出資者が提供した資金と引き換えに、事業の一部の所有権を得るものです。
- 寄付型:基本的にはリターンを伴わないもの。つまり、プロジェクトを推進する人は寄付してくれた人に何か(金銭的な報酬やインセンティブ)を返す必要がないタイプです。そのためNPOなどで多く使われています。
- 購入型:基本的にはキャンペーンが完了した時点で、資金提供者に商品を提供する、または、割引で購入してもらえなどの見返りを提供するタイプです。弊社でサポートしているのはこのタイプとなります。
では、どのプラットフォームがいいのか?
弊社がおすすめしているのは
- Kickstarter
- Indiegogo
です。
それぞれの主な特徴は以下の通りです。
Kickstarter | Indiegogo | |
支援者の数 | 2,200 万人以上 | 1,200 万人以上 |
支援者の国数 | 180 以上の国と地域 | 235 以上の国と地域 |
カテゴリー | アート、コミック、クラフト、ダンス、デザイン、ファッション、フィルム、食品、ゲーム、音楽、出版、テクノロジーなど | テクノロジー、デザイン、エンターテイメント、音楽、映画、食品、ゲーム、コミュニティプロジェクトなど |
手数料 | ◆プラットフォーム手数料: プロジェクトが成功した場合、集まった資金(目標金額ではなく)の5% 。その他決済サービスStripeにも決済手数料が発生。 プロジェクトが成功しなかった場合、手数料はかからない。 | ◆プラットフォーム手数料:集まった資金(目標金額ではなく)の5% 。さらに決済代行会社への取引手数料。そして、口座への振込手数料が発生。 ◆ファンディングのやり方はFlexible FundingとFixed Fundingの2種類がある。 ・Flexible Fundingは目標達成に至らなくても集まった資金を確保できる。 ・Fixed Fundingは目標を達成した場合のみ集まった資金を確保できる。 |
その他 | 資金調達の継続プログラムはない。継続して資金調達を希望する多くのKickstarterの成功プロジェクトはIndiegogoのInDemandに移行する。 | キャンペーン終了後も継続して資金集めをするInDemandというスキームに移行することができる |
クラウドファンディングを成功させるポイント
「商品のプロトタイプを作ったのでこれでクラファン頑張ります!」という方は十中八九失敗します。
なぜか?それはクラウドファンディングの成否は準備にかかっているからです。
ではどう準備すればいいのか?クラウドファンディング成功のための準備にはある程度の型があります。もちろん、型通りにやったからと言って100%成功するという保証はありません。しかし、成功しているプロジェクトの多くはこの型でやっています。
以下、準備とキャンペーン中にやることをまとめておきます。
- 事前準備
- 明確な目的があるか
- 自社商品に合ったプラットフォーム選び
- 感情移入が十分にできているか
- リターンの魅力が十分にあるか
- 資金集めの勘どころを押さえているか
- 身近なネットワークを活用しているか
- 他プロジェクトを徹底的に研究しているか
- キャンペーン中
- 進捗のシェアと応援依頼
事前準備
明確な目的があるか
このプロジェクトを通じてあなたが本当にやりたいことはなにか?です。ただ単に「資金を集めてこの製品を作りたいから」だと超えられない一線(成功できない壁)があると感じています。「その製品を通じて〇〇な社会を実現したい」という想い。クラファンで集めた資金を利用して作るプロダクトによって良くなる社会のイメージを目的にすること。まずはこれが必要です。
自社商品に合ったプラットフォーム選びができているか
資金を集めたい商品の種類や性格によって「ベターなプラットフォーム選び」をすることが重要です。扱っているカテゴリー、手数料率と手数料に関する考え方が違います。
感情移入が十分にできているか
キャンペーンの成功は大きく分けると
- プロジェクトに対する感情移入の度合い
- 実質的なリターンの魅力によって決まります。
そしてキャンペーン開始前からスタートできるのが「感情移入」の方。なので、
- あなた自身やプロジェクトメンバーの想い
- 商品開発に至った経緯とストーリー
- 資金調達が成功した場合の支援者を体験する明るい未来
についてテキストや動画を使ってSNSなどで発信しておく必要があります。感情が期待値を上げ、期待値が支援者を「自分ごと化」させ、それが具体的な応援となります。
リターンの魅力が十分にあるか
とは言え、感情移入だけで実際にお金を払うという支援にまで至るかというと、それほど甘くはありません。ちゃんと、実利を伴わせることが重要です。リターンの魅力度とは、「リターンの内容」と「そのリターンを得るための金額」のバランスです。その当たりはマーケットの大きさと深さによるところがあります。つまり、興味を持ってくれそうな人が十分に存在するのか?と応援したい(商品を購入したい)というニーズやウォンツの強度が関わってきます。
資金集めの勘どころを押さえているか
プロジェクトの成功、つまり資金集めの成否によく言われていることが2つあります。
- 最初の1週間で目標金額の1/4を集められると、プロジェクトの達成率は5倍になる
- プロジェクト立ち上げの「最初の3日間」が勝負
肌感として「確かに!」という感じです。だからこそ「準備」そして「それに続く最初の3日間」が勝負を分けると言えるのです。
身近なネットワークを活用しているか
成功したプロジェクトの支援者の3割は「知り合い」、つまり「直接応援を依頼した人」であるともよく言われます。つまり、「あいつがやるなら」という支援者がいることによって「偶然見かけた」支援者の行動につながっていくのです。なので、スタート前に「面白そう」「お前がやるなら」「なんか手伝おうか?」という周囲の人をできるだけ巻き込んでおくことが極めて重要なのです。
他プロジェクトを徹底的に研究しているか
あなたのプロジェクトとなんらかの類似性のある人がやったプロジェクトを研究しておきましょう。なんからの類似性とは
- 商品の類似性
- 目標金額の類似性
- リターンの類似性
などです。
それらのプロジェクトの成功要因(KSF)を徹底的に研究して自分なりに「これだ」というところまで落とし込むことが必要です。
キャンペーン中
進捗情報のシェアと応援依頼
現時点でいくら集まっているのかははプラットフォーム側の情報に更新されているので「それで十分でしょ」と思うのは間違い。SNSや自社のウェブサイトなどで「数字」と「あなたの言葉」で情報をアップデートすることが重要です。
そして、一生懸命やっている姿を見せれば「人は応援してくれる」というのも間違い。人は「一生懸命やっている姿」と同時に「一生懸命応援の依頼」をしないと応援してくれません。なので、キャンペーンがスタートしたら
- 進捗状況のシェア
- 応援依頼
を忘れずにやって下さい。