スモールビジネスの落とし穴と回避するための3つの方法

スモールビジネス

「スモールビジネスを始めて本当に良かった!」こんな風に日焼けした顔に満面の笑みを浮かべながら言っている方が周りにはたくさんいます。

一方、「こんなはずじゃなかった」と眉間に皺を寄せて毎日あくせく働いているスモールビジネス経営者がいるのも事実。

この2つの違いは何か?

そして、後者の「あくせく経営者」になってしまう落とし穴とは?そして、それを避けるためにどうすればいいのかについて、具体的な3つの方法をご紹介していきます。

まず結論から言うと、スモールビジネス経営者が陥りやすい落とし穴とは以下の3つです。

  • 第一の落とし穴:「好き」をビジネスにしてしまう
  • 第二の落とし穴:弱い下請けになってしまう
  • 第三の落とし穴:ダメなポジションをとってしまう

私はこれまで日米のスモールビジネス経営者とその予備軍の方々200社以上に1on1のコンサルをやってみて、共通しているところはこれ!というのがあったのでここでシェアしていきます。

スモールビジネスの落とし穴と回避するための3つの方法

そもそもスモールビジネスの3つのメリットとは

スモールビジネスは、ベンチャーのように投資家からの猛烈なプレッシャーもなければ、時間との厳しい戦いもほぼありません。サラリーマンのように上司からの理不尽な命令を受けたり、社内の面倒な人間関係もないし、「日本のサラリーマン平均年収」のような心理的制約に影響を受けることもありません。

基本、自分のペースで事業を計画し、顧客のニーズだけに目配りして、誰からの承諾の必要もなく「やれそうなこと」と「儲かりそうなこと」を兼ね備えた領域で生きていけばいい最高の生き方であり、素晴らしいビジネスのあり方だと思っています。

そんなスモールビジネス経営者になる3つのメリットとはなんでしょうか?

それは、うまくいっているスモールビジネス経営者が持っている3つの自由にあります。

  • 時間の自由:自分のペースが相当の割合で確保できる
  • 経済的な自由:必要経費による生活レベルのアップ
  • 行動の自由:世間からの過度な注目をされることによる行動のしにくさがない。

時間の自由

時間の自由とは、「朝遅くまで寝てられる」とかそういうことではありません。朝はちゃんと起きた方がいいと個人的には思っています。ここで言う時間の自由とは、ビジネスが成長していく時間軸を自分のペースで計画することができる自由のことです。

ベンチャーの場合、VCなどからの投資金額が次第に減少していく毎日の中で、これが枯渇するまでに売上と企業価値を上げる、言ってみれば「時間との勝負」があります。

サラリーマンに時間の自由がないことは言うまでもありません。時間を売って給料のもらっているのだから仕方がありません。

スモールビジネスの場合、事業をスタートしたり、商品をローンチして、それを目標売上に達するための計画を立てるのも自分、実行するのも自分。全て自分で決められるのです。夏休みの宿題を思い出して下さい。「夏休みに入った途端やるタイプ」「最終日にまとめてやるタイプ」「その中間」、いろいろいますが、それを自分のタイプやピークの持っていき方に合わせて自分で作り込めます。つまりフリーな時間を作り出す自由度もあるということ。これがスモールビジネス経営の魅力の一つです。

経済的な自由

基本的に他人から大きな出資を受けることなくスタートするスモールビジネスは経営者の裁量でいろんなことができます。

自宅を事務所利用している場合には、家賃や水道代・光熱費などの一部を経費とすることができるほか、事務用品や社用車のガソリンなど消耗品は経費として計上することができます。また、接待交際費も一定の条件を満たせば損金に算入できます。

もちろん全てルールがあります。合法的にやらなければならないのは言うまでもありませんが、ライフとワークの境目があいまいなスモールビジネス経営者は、常識的に、かつ合法的にかかった経費をプラスに活かしていく自由度があり、その意味でも経済的な自由が得やすいと言えると思っています。

行動の自由

大企業の社長や役員になったり、注目のベンチャーを動かしたりすると何かと話題になり、世間の目を気にせざるを得ない状況になることもゼロではありません。その点、スモールビジネスは世間から注目されるようなことにはなりません。世間や競合から注目されない領域だからこそ、その市場にチャンスがあり、一番手になれ、収益が上がるのです。

なので、世間の目を気にして行動が制限されることはほんどありません。

こんな素晴らしいスモールビジネス経営ですが、落とし穴もあります。注意していないと簡単に落ちてしまう「一見魅力的に見えるもの」落とし穴なのです。それにハマってしまうと「あくせく経営者」になってしまう可能性があるので要注意です。

では、その3つの落とし穴について説明します。

スモールビジネス経営者が陥りやすい3つの落とし穴

以下は3つの落とし穴です。

  • 第一の落とし穴:「好き」をビジネスにしてしまう
  • 第二の落とし穴:弱い下請けになってしまう
  • 第三の落とし穴:ダメなポジションをとってしまう

第一の落とし穴:「好き」をビジネスにしてしまう

「好きを仕事に」という言葉がいつからかマントラのように言われているのも事実。でもこれ本当でしょうか?確かに、努力なく継続できるかどうか、という点でいうと「好きなこと」と「好きでないこと」を比べたら、圧倒的に「好きなこと」が有利に見えるかもしれません。そして、「好きを仕事にする」ことが幸福感をもたらすような気がするのも確かです。

でも実は、だからこそそこに落とし穴があるのです。

「好き」をビジネスにすると、

やらなくてもいいことまでやってしまう

という現象が起きます。趣味でやっているのであれば全く問題ありません。しかし、ビジネス、特にスモールビジネスの場合、先端的な技術を強みにしているわけでも、スケールメリットを活かせるほど大規模に展開しているわけでもありません。その意味で、あなた、つまり経営者の行動にどれだけレバレッジをかけて売上にできるのかが勝負です。なので、やらなくていいことは「やってはいけない」という大原則があります。

でもどうでしょう?「好き」なことだったら、ついついやってしまいませんか?それが収益性を悪化させ、ひいては収益回復のために「好きでないこと」もやらざるを得ない状況になり、結果「好き」なことも「かつて好きだったこと」になってしまうのです。これが「好き」をビジネスとすると失敗する理由です。

対策

「好き」をビジネスにするのはやめましょう。参入を検討する領域は

自分が得意な領域で、かつ人より少しだけ秀でた領域

です。忘れてはならないのは、我々はスモールビジネス。巨大市場を圧倒的なパワーで制圧するとかは考えません。時間と金銭と行動の自由を獲得できるほどの収益があればいいのです。得意で少しだけ秀でた領域があれば、それで十分勝負できます。

第二の落とし穴:弱い下請けになってしまう

脱サラの人に多いのがこの落とし穴です。

勤務していた会社を辞め、その会社の業務を外注として請ける形で起業したパターン。かつて勤めていた会社なので、その企業風土、業務内容、そしてキーパーソンまでも知り尽くしているので、一定の受注にはつながりやすいのがメリットです。しかし反対に「うちの状況わかるだろ」と低予算で高アウトプットも求められることが多いのがデメリット。

本当に状況がわかってしまうだけに「仕方なく請けてしまいがち」。一回二回ならいいかもしれません。しかし、収益性の悪い仕事をたくさん受けると、それをカバーするために多くの受注を取らなければならなくなる。そうなると多くの作業を引き受けたゆえにアウトプットの質が低下し、結果、評判も落ちていき・・・と悪いサイクルまっしぐらとなってしまうのです。もちろん、思い描いていた「自由な時間」は夢のまた夢。これが弱い下請けになってしまうメカニズム。

対策

下請けビジネスを否定するつもりは全くありません。逆に集客コストの低い素晴らしいビジネスモデルだと思っています。しかし、弱い下請けにならないためには、

発注する企業に「外注する」合理的な理由がある領域で、かつ外注ニーズが強烈に高い領域だけに限って少案件・高単価でやる

ことを徹底すべきです。

第三の落とし穴:ダメなポジションをとってしまう

市場があるからとチャンスがありそうだからといって「盛り上がっている市場」「話題になっている市場」を無防備に攻めてしまうのはスモールビジネスの勝ち方ではありません。そこに飛び込んでしまうのはダメダメなポジショニングです。

すぐに分かる通り、そこには多くの競合がひしめいていて、かつ、競合のほとんどは「あなたより経営資源の豊富な」企業です。スモールビジネスの主な経営資源は経営者である「あなた自身」です。あなたの「得意で少しだけ人より秀でたこと」だけで勝負する対戦ゲームなのです。

あなたには先端的なテクノロジーもないし、規模の経済という味方もいません。特にサラリーマン出身者はこの落とし穴に陥りがちです。かつて「会社が持っていてあなたが使っていたもの」をあたかも「まだ持っている」という幻想を抱きがちだからです。速攻捨てて下さい。

対策

「自分が得意で、かつ、人より少しだけ秀でている領域」がどこにあるのかを探して、そこにいる人たち向けのビジネスをすること。市場規模はあなたが思っているより大きくないかもしれません。大丈夫、それでもいいのです。それよりも強いニーズがあることが大事。少ロット高単価というスモールビジネスの一つの勝ちパターンを実現することができるからです。

まとめ

どんなビジネス領域にも言えるかもしれませんが、スモールビジネスには「幸せな経営者」と「そうでない経営者」がいます。スモールビジネスという、特に優れた才能や能力がなくても成功することができるビジネス領域で「そうでない経営者」になるのはもったいな過ぎる。

陥りやすい落とし穴を事前にアタマに入れておいて、それを回避する方法を知識として持っておく。そうすれば、その状況に直面した時に知識を引き出して回避行動を取ることができるのです。

陥りやすい落とし穴は、3つでした。

  • 第一の落とし穴:「好き」をビジネスにしてしまう
  • 第二の落とし穴:弱い下請けになってしまう
  • 第三の落とし穴:ダメなポジションをとってしまう

それを回避するためには、

  • 「好き」をビジネスにするのではなく、得意で、少しだけ人より秀でたことをやること
  • 下請けビジネスをする場合、発注元に外注したい合理的で強いニーズがあること
  • 自分が勝負する領域で強いニーズのある人を顧客にして、少ロット高単価ビジネスをすること

でした。

(あ)

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